■■■■落選俳句館2004■■■■

   春の雪    ハードエッジ    第6回俳句朝日賞【落選作】30句
    手のひらに水となりたる春の雪
    からびたるかそけきものを種子袋
    枝分れ枝分れして百千鳥
    亀すいと花びらはくるくるとかな
    ゆらゆらとゆ舟の春となりにけり
    
    万太郎忌の黄金色なる玉子焼
    背がのびて花さきそめて胡瓜かな
    つつがなく裸となつてゐたりけり
    潮風に育つて蝿の逞しき
    空のみにあらずよ人も夕焼けて
    
    山すその海のほとりの踊かな
    下駄箱の上に鬼灯戸締りす
    きつね色の豊の秋とぞなりにけり
    稲刈の今にも雨のふりさうな
    鶏頭の頭切られてしまひけり
    
    菊坂の日暮れは早し一葉忌
    返り花幹にかくれてゐたりけり
    霜除にきれいに霜のふることよ
    馬鈴薯といふ土くれの形かな
    踏みたれば水の音して落葉かな
    この池を枯れ尽したる蓮かな
    山茶花と薄茶色なる皮衣
    ほころびしものをつくろふ小春かな
    暦売り東の方に帰るかな
    年の瀬を映す小さなテレビかな
    
    お手玉の春着の柄でありにけり
    ふりだしに戻りしことも初笑
    
    ゆきのふる夜となりけり雪うさぎ
    白鍵と黒鍵三寒四温かな
    吐く息のまう一息や春近し